作家ヘンリー・ミラーの小説に『北回帰線』というものがある。私の父がヘンリー・ミラーが好きで新潮社の全集を端本で持っていた。ヘンリー・ミラーの晩年の写真は、なんとなく私の父に似ている。(笑) 私は父に内緒でヘンリー・ミラーの『北回帰線』を他の端本と一緒に自分の書棚に移してしまった。父はずいぶん経ってから「ヘンリー・ミラーの小説知らない?特に『北回帰線』」と言っていたが「知らない」と答えておいた。そこまでして読んだくせに内容はほとんど忘れてしまった。(笑) 今年の春に神保町に行った時に、ヘンリー・ミラーの全集が比較的安く売っていたから、買ってこっそり返しておこうかな。(笑)
さだまさしのアルバム『夢回帰線』のタイトルは私にヘンリー・ミラーの小説を思い起こさせた。ただ、さだまさしの『夢回帰線』はヘンリー・ミラーの自伝的小説とは違い、ハワイのマウイ島のラハイナやロサンゼルスのマリナ・デル・レイというマリーナが出てくるような夏を想起させるロマンチックなアルバムになっている。私が確か中学生か高校生だったと思うが、このアルバムが新譜で出た時にレコード店に買いに行ったのを覚えている。そして夏中このアルバムを聴いていた。レコードを買ったのはこれが最後だったような気がする。その後はCDが出てきたからだ。このアルバムでは、さだまさしがマウイ島で購入したというMARTIN(マーチン、高級なギター)の000-21(トリプルオー・トゥウェンティワン)というギターで演奏されている曲もある。私は今まで楽器屋でずいぶんMARTINのギターを物色してきたが、000-18(トリプルオー・エイティーン)は見たことはあっても、000-21にはめぐり合ったことはない。それくらい貴重なギターなのだろう。マーチンのトリプルオーシリーズはボディが少し小さくできていて、やわらかくて繊細な音が出る。さだまさしも一目ぼれで買ったようだが、とても美しい音色を奏でている。
「ラハイナ」や「マリナ・デル・レイ」という土地の名前は、その響きだけで何か美しさを感じさせる。このような美しい響きを持つ地名を歌の中に挿入することができるさだまさしの言葉のセンスは卓越していると思う。「ストロベリー・マルガリータ」というカクテルも歌の中に出てくるが女性の名前のようだ。アルバム『夢回帰線』にはケニアのナイロビを舞台にした『風に立つライオン』という曲も収録されている。この曲は聴く人をみな感動させてしまうようだ。私も初めてこの曲を聴いた時は感動で身震いしたことを覚えている。『夢回帰線』には『夢回帰線Ⅱ』という続編のアルバムもある。ナイル川やカリブ海がモチーフになっている歌があったり、もちろんハワイもモチーフになっている。いつかラハイナやマリナ・デル・レイでサンセットを眺めてみたいものだ。
ちなみにヘンリー・ミラーにも『北回帰線』の他に『南回帰線』という作品があるが、それはまだ読んでいない。今は『北回帰線』なら文庫で簡単に手に入る。
さだまさしのアルバム『夢回帰線』と『夢回帰線Ⅱ』は、現在は廉価版のCDやダウンロードで聴けるみたいだ。参考に「ラハイナ」が出てくる歌は『バニヤン樹に白い月~LAHAINA SUNSET~』。「マリナ・デル・レイ」と「ストロベリー・マルガリータ」が出てくる歌は『6ヶ月の遅刻~マリナ・デル・レイ~』。MARTINのギターで演奏しているのは『pineapple hill(パイナップル ヒル)』。