毎週Jsports でイングランドプレミアリーグを楽しませてもらっている。
Jsports は実況も解説も良いので、サッカー観戦の楽しさを増してくれる。
戦術や選手のプレイ特性のほか、選手と監督にまつわる情報やクラブやスタジアムに係わる情報などを適宜与えてくれるし、時には辛辣な解説も衛星放送ならではで面白い。
そんなプレミアリーグの放送の実況を数年前まで『ダイヤモンド・サッカー』で有名な金子勝彦さんが担当していた。
今でもいい試合を見たり、クラブや選手、監督にまつわるトピックスがあったりすると「金子さんだったら、何て言うかな」「どんな実況するかな」とつい思ってしまう。
サッカー放送のテーストについては、それぞれ好みがあると思う。
例えば、民放がいいとかNHKがいいとか、あるいは衛星放送がいいとかね。
実況や解説者にも好みがあるんじゃないかな。
僕は金子勝彦さんのテーストが好みなんですよ。
大袈裟な言い方をすると金子勝彦さんの文化圏とでも言うのかな(笑)
それが好きなんですよ。
文化圏と言ったのはイングランドのサッカー文化に通じるものかもしれません。
1968年に始まった『ダイヤモンド・サッカー』は元々イギリスBBCの『マッチ・オブ・ザ・デイ』を日本語に差し替えたものだったから、金子さんは毎週モノクロのフィルムを喰い入るように見て、まだ未知の世界だった海外サッカーの実況の専門用語や技法を模索した先駆者だった。
そこに海外経験が豊富だった故・岡野俊一郎さんに解説をお願いして、サッカーの母国イングランドの技術、戦術のほか、スポーツ文化としてのサッカーの歴史やそれを支える風土などを話してもらったそうだ。
金子さんはBBCコメンテーターの実に愉しそうな、いきいきとした実況描写に羨望を憶えたと言っている。
だから金子さんの実況は愉しそうでしょ。(笑)
ちゃんと僕には伝わっていましたよ。
こういった経緯を考えると、現在のJsportsのプレミアリーグの放送はまさにその延長線上にあると言えるかもしれない。
もっとも今は衛星放送やインターネットの普及で、当時に比べて手に入れられる情報量の多さや伝わるスピードの速さは格段に上がっていて、選手の移籍情報なんかタイムリーに知ることができる。
プレミアリーグ以外のリーグや選手の比較も容易にできるようになった。
当時インターネットが無かった時代に、金子さんは岡野俊一郎さんと協力して、雑誌Timeなんかの記事を収集して、世界のサッカーの窓口となる放送をしていったんだ。
「(力強く)さあ、ランパードにボールが集まり出しました!」
これは金子さんがチェルシーが試合の主導権を握り出したことを表現してるんだけど、これだけでいいんですよ。だって映像があるんだから、余計なこと言わなくても。
金子さんはこれができる数少ない実況のひとりでした。
あとね、金子さんはプロの実況なんだけど、いちサッカーファンでもあるわけ。
ある対戦カードがつまらなかったのね。
解説者も内容が乏しい試合を盛り上げようがない。
僕もつまんない試合だなあ、と思って見ていたら、金子さん、こう言ったんだよね。
「もう少し炎立つ試合が見たいですねー」
ホントそうだよねって思うわけ(笑)
その試合を見に来たサポーターや有料の衛星放送を見ているサッカーファンの代弁しているのね。
なぜ、これが出来るかというと、ご自身がサッカーファンである心を忘れていないからだと思うよ。
「炎立つ試合が見たい!」・・・サッカーへの敬意と愛情と叱咤が合わさったいい言葉です。
「サッカーを愛する皆さん、ごきげん如何ですか」
このフレーズは、金子さんがテレビの前の少年を思って自然に口に出た言葉だそうです。