2018年7月15日(日)19:00 NACK5スタジアム大宮
大宮アルディージャ対大分トリニータ
試合結果 大宮1-0大分(得点者:大宮 4'大前元紀〈PK〉)
なかなか緊迫感のあるゲームでしたね。
緊迫感を生み出していた理由はいくつかあると思うけど、その大きな理由のひとつは大宮の前線からのプレッシングだったね。兆候は前からあった。僕が顕著に感じたのは6/30のホーム愛媛戦だね。
大宮のサッカーは進化しつつある。
進化した部分は積極的に前線からプレッシングするようになったこと。これは以前には見られなかった。これによって、DFラインを押し上げられるようになって、できるだけ高い位置でボール奪取して、速攻を狙っていることを感じさせるね。
だから、サッカーに緊迫感がある!
そこだ!って思うところに選手がしっかりアプローチして、ボール奪取なんかが起こると、ゾクゾクするよ。今までは、引いて守っているだけだったから、引っかけても速攻にならないし、だらーっとサッカーをしてる感じで、緊迫感なんてなかった。(笑)
大分戦は、FW大前、FW富山からプレッシングが始まって、サイドハーフのMF茨田、MFマテウス、インサイドハーフのMF三門、MF大山が、大分の選手やスペースに均等にプレスを掛けていくから、ボール奪取のタイミングを見極めたくて、見ているこっちも気が抜けなかった。(笑)
大分は片野坂さんが監督をしている。ペトロビッチ監督のスリーバックシステムを継承してるようだし、ロングボールを使わず、最終ラインから繋いでいこうとするから、大宮のカモになった。
ミシャのサッカーはプレイヤーを両サイドにいっぱいに開かせるのが特徴だ。今までの大宮なら、プレスをかけないから、相手ストッパーから自陣に侵入したサイドプレイヤーへのパス供給を簡単に許していた。そこからクロスボールを上げられたり、ストッパーへリターンされ、そこから縦パスを入れられることも多く、跳ね返しても、引きすぎているためにセカンドボールも拾えず、仮に拾ってもFWの位置が低く速攻は効果がない、という最悪の悪循環に陥っていた。
大分戦の大宮は違った。相手DFや守備的MFに前線から均等にプレスがかかるために、相手後方からの容易なパス供給を封じた。また、サイドハーフ、特にMF茨田陽生選手のポジショニングが絶妙で、相手SBが開いても、同じ位置まで落ちてこないで、少し高めのポジションを取って、パスコースを切り、相手ストッパーからの前線やサイドへのパス供給を未然に防いだ。
ちょうどワールドカップ前の国際親善試合パラグアイ戦で乾選手が見せたような高いポジショニングだ。これによって、乾選手はストッパーからのパス供給を防いだだけでなく、高いポジションから速攻を掛けて自ら得点したシーンは記憶に新しいだろう。
茨田選手もサイドハーフに起用されてから得点をしているのも、高いポジショニングと無関係ではないかもしれない。
MF茨田選手とMFマテウス選手は時間帯によってポジションを左右チェンジしてたけど、茨田選手が寄ったサイドはこのディフェンスができていたように思う。ポジションチェンジはオフェンス志向なのかディフェンス志向なのか、または両方なのか、機転の利いた振る舞いだった。
この素晴らしい試合を勝たせたいと思ったし、また、こういう試合を2-0、3-0にすることがJ1昇格、あるいはJ1で通用するチーム作りなのではないかと思ったけど、辛勝になってしまった。
ここで石井監督の試合後のコメントを見てみよう。
この少し間抜けなコメントを読めば、1-0で逃げ切るしかなかった、ということがわかるだろう。
後半になって両サイドのディフェンスができなくなったのは、サイドハーフがディフェンスに入るタイミングが遅れるようになったからだ。茨田選手のクレバーなディフェンスと、得意ではないにしても、マテウス選手のディフェンスのおかげで大宮のサイドディフェンスはもっていた。
しかし後半になって、マテウス選手には明らかに疲労が見られ、前線に残ったままサイドに戻れない時間帯もあった。茨田選手も速攻のチャンスにスプリントを掛けられないシーンを見かけた。19:00キックオフとは言え、試合開始時の気温は30度だった。サイドハーフにどれほどの負担が掛かっているのかを知らないはずがない。77分になるまでマテウス選手を交代させなかったのは、いかなる判断か?茨田選手にいたってはフル出場だ。猛暑の中でサイドハーフを酷使した理由は何か?
先制点の時間が早すぎて、大宮のイレブンがやや守勢に入ったことは否めないにしても、プレスは緩むことなく、後半までボール奪取のチャンスをよくうかがっていた。しかし速攻の想像力と破壊力に欠けていた。もちろん結果論として、後半のFW大前選手のFKが決まっていれば、大分も戦意を喪失させていたかもしれない。
「ボールを持って」相手陣内に運ぶ必要も必ずしもない。
千葉58.8% 大宮41.2% スコア1-3
千葉戦のスタッツがそれを物語っている。アタッキングサードにはパスでも侵入できるのだ。
この少しとんちんかんなコメントを読めば、少なくとも石井監督はこのプレッシングサッカーを理解していないことがわかる。
このサッカーは「ボールを持って、相手陣内のアタッキングサードに持ち込む」ものではなくて「高い位置でボールを奪取して、速攻を仕掛けるサッカー」だと思いますよ。
先制点の早さが、この思想を曇らせて、ボールを持たせてしまった。少し良かったのは、酒井選手の右サイドだけで、あとはストッパーが無駄な横パスをしているだけのボール保持が多くなった。
このプレッシングサッカーのコンダクター(指揮者)は石井監督?かもしれないけど(笑)、たぶんMF三門雄大選手だね。三門選手はインサイドハーフの中でもディフェンシブな役割を占める。スペースを消す動きも、人にアプローチする動きも、両方のスキルがなくてはならない。三門選手はその両方ができるうえに、守備範囲が広い。中央、サイド、と縦横無尽に守備範囲をこなすことができる。そして三門選手にはそれをこなすだけのスタミナがある。
ここに大山選手の才能が加わると、千葉戦で大前選手のゴールをアシストするようなパスが生まれる。
そこにはボールを持つなんて思想は感じられないよ。(笑)
それと結果的に値千金のゴールになった先制点は、マテウス選手のドリブルから生まれた。ドリブルだ!これも戦術に組み込む気かな?これは個人技だ。この個人技がなければ、戦術に埋もれて、予定調和の引き分けか、敗戦を迎えていたことは、何となく想像がつきそうだね。愛媛戦を思い出すよ。
ボール奪取をしようとしている姿勢がよかったし、随所にいいプレイも見られたから、もっとよくしたいと思って、今日はついクドクドと言ってしまいました。