ついに久保建英(たけふさ)(15歳)が5月3日に行われたルヴァンカップFC東京対コンサドーレ札幌戦でJ1にデビューした。昨日5月10日に行われたルヴァンカップ大宮戦はJ1デビュー2試合目だ。久保は後半81'から交代出場したが無得点に終わった。試合は東京4-3大宮の乱打戦をFC東京が制した。大宮も1試合で3得点を挙げたが勝てなかった。ここまでシーズンを通して1試合に2点以上獲ったことがなかっただけに3得点は評価したい。特に今シーズン無得点だったFWムルジャの得点は喜ばしいことだが、ここまで得点が無かった外国人FWを継続起用していくかどうかはクラブの判断に任せたい。
さて、久保建英は2016年11月5日に行われたJ3リーグに15歳5か月で出場し、それまで川崎フロンターレ森本貴幸(当時東京ヴェルディ所属)が2004年に果たした15歳10か月でのJリーグ最年少出場記録を塗り替えた。2017年4月15日にはJ3リーグセレッソ大阪戦で15歳10か月での初ゴールを決め、これも森本貴幸が保持していた15歳11か月でのJリーグ最年少得点記録を塗り替えた。そして今年2017年5月3日にコンサドーレ札幌とのカップ戦でJ1での出場を果たした。あとはJ1での得点とリーグ戦での出場を果たすのみだ。
久保建英は2011年にスペインのFCバルセロナのカンテラ(ジュニアユースを育成する下部組織)に入団している。FCバルセロナのカンテラは名だたる選手を輩出してきた。カタルーニャ出身ではシャビ、イニエスタ、セスク・ファブレガスのほか、外国人ではリオネル・メッシやサミュエル・エトーなどを輩出している。久保建英はカンテラに所属するだけでなく、チーム内得点王やリーグ得点王になる活躍をしていたようである。メディアでも取り上げられ断片的に映像も流れていたと思うが、私が久保建英を試合を通じて見たのは2016年の秋に開催されていたU19選手権(バーレーン)での代表戦だったかと思う。何戦を見たのか記憶が定かでないのだが、久保建英は先発で出場していたと思う。まず驚いたのはドリブルのうまさだった。大きなフェイントを使うようなドリブルではないのだが、自分より年上の相手選手を一発で置き去りにするようなドリブルを何度か見せてくれた。ボールの持ち出し方が上手く相手選手は久保建英に触ることもできないようなドリブルだ。その次にトラッピングの上手さと発想の豊かさだ。サイドライン際で非情に高く浮いた球を事も無げにトラップしただけでなく、ライン際をドリブルできるような方向にボールをコントロールした。スローモーションで何度か見て初めて久保建英がどのようにトラップしたかわかるような、華麗なトラップだった。最後は久保建英がバイタル中央でグラウンダーのクロスをトラップしたが若干ボールが浮いてしまった。ミストラップにもかかわらず久保建英は体をうまく使って浮いたボールをボレーシュートまで持っていき、ミスと感じさせないような機転を見せてくれた。ドリブル、トラップ、シュート、このいずれも独創的で想像力溢れるものだった。見るまでは信用していなかったが久保建英の実力を本物だと感じさせるに十分な時間だった。
私はかつてFCバルセロナでプレイできると信じた日本人選手が一人だけいた。久保建英がJ1デビューした時に同じピッチに立っていたコンサドーレ札幌の小野伸二だ。小野伸二には人を魅了する技術があった。目の肥えたカタルーニャ人をカンプノウで沸かすことができるのは小野伸二しかいないと思っていた。小野伸二が浦和レッズでJリーグにデビューした時、チームメイトに元FCバルセロナのチキ・ベギリスタインがいた。ロマーリオやラウドルップとFCバルセロナの黄金期を作った選手だ。小野とベギリスタインがプレイする光景は夢のようだった。チキがFCバルセロナのテクニカルディレクターに就任したと聞いた時には小野伸二がFCバルセロナでプレイする現実味が増したと勝手に一人で思っていたが、実現することはなかった。
久保建英はFCバルセロナがFIFAの定めた外国人登録規約に違反したために試合に出場できなくなり、やむなく退団し帰国したとのことだが、FCバルセロナは久保建英はあくまでもFCバルセロナの所属選手と言い張っているようだ。久保建英がFCバルセロナでプレイできるかはわからない。しかし、将来メッシのようにカンプノウを沸かす選手になることがあるのなら祝福したい。もちろんその前にJリーグのピッチで久保建英が見られることを楽しみにしている。
Jリーグ2017 ルヴァンカップ グループステージ 第5節 FC東京対大宮アルディージャ
2017年5月10日(水)19:00 味の素スタジアム
FC東京対大宮アルディージャ
試合結果 東京4-3大宮(得点者:東京 25'ピーター ウタカ 35'オウンゴール 39'中島翔哉 61'森重真人 大宮 21'ドラガン ムルジャ 32' マテウス 90+2' 播戸竜二)