2017年11月15日(水)ベルギー・ブルージュ/ヤン ブレイデルスタディオン
日本対ベルギー
試合結果 日本0-1ベルギー(得点者:ベルギー 72'ルカク)
現代サッカーで勝つために欠かせないMFの存在、それはベルギー代表のデブライネのようなMFだ。
もちろんベルギー代表の強さはMFデブライネの存在の他にも得点したFWルカクや、残念ながら日本戦は欠場したFWエデン・アザールのほか、FWメルテンスのような選手の存在によって成り立っている。
しかしMFデブライネはその才能でベルギー代表だけでなく所属するクラブチーム、マンチェスター・シティを今季負けなしで首位を独走させることにも貢献している。
昨季プレミアリーグでのアシスト数は18でリーグトップ、今季は現時点で2ゴール6アシストだ。アシストの内容も決定的な縦パスを通す力があるほかクロスボールでのアシストもある。
特に縦パスのセンスは目を見張るものがあり、日本戦でも前半に得点には至らなかったが、目の覚めるような縦パスを供給するプレイがあった。
驚くのは、MFデブライネはパスだけでなく、ドリブルでの突破やフリーランニングで自身がパスを受ける能力にも長けており、得点能力もあることを示している。良質で豊富な運動量がそれを支えていることは言うまでもない。
パサーなどと呼ばれてパスアンドランをしないMFとはわけが違うのだ。
MFデブライネには現代サッカーがMFに求める全ての能力を身に着けているといっても過言ではない。
このような才能が優秀なFWと融合する時、その能力を最大限に発揮させることになる。
ベルギー代表のFWルカク、FWアザール、マンチェスター・シティのFWアグエロ(アルゼンチン代表)、FWジェズス(ブラジル代表。日本戦でもゴールした)などだ。
ベルギー代表のW杯予選は9勝1分(43得点1失点)、マンチェスター・シティは11節終了時点で10勝1分(38得点7失点)だ。
この驚異的な数字にデブライネのような理想的なMFが貢献していることを知っておかなければならないだろう。
ベルギー戦の72'の失点に関して言うと、本当に残念な失点だった。おそらく日本のメンバーがそれほど警戒していなかった選手MFシャドリにドリブル突破されてしまった。
MFシャドリをタックルしなければならなかったのはFW久保裕也とMF森岡亮太だがタックルしなかった。MFシャドリと並走するFW久保とMF森岡が邪魔になりMF山口蛍もタックルにいけずペナルティエリアに侵入されたためにDF吉田麻也もタックルに行けなかった。MFシャドリのふんわりとしたクロスボールも絶妙で最後はマンチェスター・ユナイテッドのポイントゲッターでもあるFWルカクにやられてしまった。
この部分だけを見ると、ディフェンスの緩慢なプレイに見えるが、途中交代した選手が試合に没頭できていないことを示す、いい反省事例になった。
FW森岡は62'、FW久保は68'に途中出場した選手だ。試合に必要な激しいコンタクトプレイが瞬時にできなかったと思われる。たらればになるが、もしふたりが先発していたらこんなことにはならなかったかもしれない。しかし控え選手はいつ試合に出てもいいように、フィジカルもマインドも準備をしていなければならないという教訓になったのではないだろうか。奇しくもFW久保、MF森岡ともに地元ベルギーリーグで活躍する選手だった。
試合全体を見ると、日本代表はブラジル戦と同様によく戦っていたと思う。
前半は右MFで先発した浅野拓磨が右サイドを突破してチャンスを作っていたし、オフサイドだったがセットプレイからDF吉田麻也の惜しいヘディングシュートもあった。FW大迫勇也も流れの中から惜しいヘディングシュートがあった。後半は速攻からFW杉本健勇のシュートシーンがあった。
守備面もMFデブライネに決定的な縦パスを供給されてはいたものの、最後はやられていなかったし、FWルカクも72'にゴールを許すまではよく抑えていたと思う。サイドの守備もDF長友佑都、DF酒井宏樹ともに安定していた。
テレビの実況や解説者はリップサービスもあろうがMF浅野やMF乾のことをやたらに世界に通用する走力、ドリブル力と言うのだが、世界に通用するなら、得点やアシストをこの2試合で決めたはずだ。
この2試合の攻撃面に関していうと、世界に通用したのはブラジル戦のセットプレイによるDF槙野智章のヘディングシュートだけだ。
ブラジルやベルギーのような強豪と対戦する時、セットプレイからの得点が非常に重要になってくる。
流れからの得点がいかに難しいか実感できたのではないだろうか。
決定力が不足しているなどと言うのは、実力が拮抗している相手や格下の相手から得点できない時に言うセリフだ。
日本代表のこの2試合の内容を辛辣に批判している著名人の記事を見かけるが、どの目線で物を言っているのか疑いたくなるものがある。
確認しておこう。FIFA世界ランキングでブラジルは2位、ベルギーは5位、日本は44位だ。
ランキングを気にしてはいけないのはピッチに立って戦っている選手だけだ。
一方で、着実に日本代表メンバーは世界での経験を積んでいる。
今回選出された日本代表メンバー25名中12名は海外のクラブチームで活躍する選手だ。
今回は代表メンバーから外れたが、香川、岡崎、本田などが選出されていれば海外で経験がある選手はもっと多くなる。
海外で活躍する選手にはプレミアリーグ(イングランド)、ブンデスリーガ(ドイツ)、セリエA(イタリア)、リーグ・アン(フランス)など、世界でもトップレベルのリーグでの経験を多く持つプレイヤーも増えている。
また、今や国内のJリーグも3部リーグ制となり分厚いリーグになりつつある。Jリーグで結果を残すような勢いがある選手やベテラン勢との融合もうまくやれれば、日本代表のレベルを押し上げていけることになるだろう。
ベルギーのデブライネのような選手は一朝一夕では生まれない。
海外で通用するような技術の向上や、海外、国内を問わずサッカーの経験値を多く積んでいく必要がある。
そのためにも今回の欧州遠征のようなレベルの高い国や実力が拮抗する国との親善試合の機会を持ち、自分たちの実力を確認することは大事なことのひとつではないだろうか。
また、欧州のトップレベルのクラブで活躍する選手が多くなってきている。ACLの日程の兼ね合いでJリーグの実施期間を秋開催にすることは難しいかもしれないが、代表の親善試合を組みやすくするためにも、Jリーグの実施期間を欧州のスケジュールに合わせることも高い視点で考慮していくことも検討したらどうだろうか。
余談だが、元フランス代表でアーセナルやバルセロナでも活躍したティエリ・アンリがベルギー代表のアシストコーチにいることに驚いた。
ティエリ・アンリはフランス代表でエメ・ジャケ監督やロジェ・ルメール監督のような名将やクラブでもアーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督の薫陶を受けていて、ワールドカップやユーロ選手権の優勝経験者だ。
このような人材がベルギー代表のアシストコーチにいることもベルギー代表が強い要因のひとつかもしれない。
アンリは代表でもクラブでもゴールを量産したFWで本当に華麗なゴールが印象的なプレイヤーだった。
華麗なゴールでなくても構わないのでアンリのようにゴールを量産するFWがほしいですね。(笑)
それとビデオ判定がないベルギー戦は試合がスムーズでよかったよ。(笑)