さて、残留をかけた32節の仙台戦は残念ながら敗戦する結果となった。
32節終了時点残り2試合で15位広島との勝ち点差は6だが得失点差が10あることにより大宮アルディージャの事実上の降格が決まった。
まずは32節の仙台戦を少し冷静になって振り返ってみたい。
私はもし監督を交代するなら10月28日から3週間あったインターナショナルマッチウィークしかないと思っていた。
結果としてクラブは監督の交替を選択して11月5日にそのことを発表した。
11月18日のリーグ戦までに練習する時間は十分あったし、そのことが急造監督の助けになると思っていた。
しかし、蓋をあけてみるとアドバンテージになるはずだったその十分な時間が32節の勝敗を大きく分ける原因になってしまったのではないかと考えている。
その理由は選出した先発メンバーにある。
石井監督は4-4-2のフラットの布陣を敷いてきた。
私はこの布陣自体には好感を持った。
というのも、病気やケガのためにDF河本裕之とDF菊地光将が離脱したことによりディフェンスの要である2センターバックをバックアップメンバーで対処しなければならなくなった。
そこでシンプルにセントラルミッドフィルダーを2枚、センターフォワードを2枚というシンプルな布陣にすることによって、縦のセンターラインを2-2-2にして分かりやすく全体を強化したものと推察している。
私にはDFラインの4枚、MFラインの4枚でがっちり守ってトップの2枚で速攻をかけようとする意図がこの布陣から感じ取ることができた。
しかし先発のメンバーを見て愕然とした。
ただでさえ先発出場の少ないDF山越康平とDF高山和真が先発している状況なのにもかかわらずDFラインの上に位置するセントラルミッドフィルダーにリーグ先発から5試合離れているMF大山啓補と同じく19試合離れているMF金澤慎をコンビ起用したのだ。
そしてさらに中盤の上に位置するセンターフォワードにはリーグ先発18試合ぶりのFW清水慎太郎が起用され、純粋なセンターフォワードとしての先発起用はこれもおそらく十数試合ぶりになるFW大前元紀が起用されたのだ。
先発起用については置くとして、石井監督がこのフォーメーションでやりたいことはなんとなくわかった。
DFラインを極力下がらないよう維持しながら中盤でプレスをかけてツートップで堅守速攻を試みようとしている意図を感じた。
ところが、起用されたメンバーは久しぶりにリーグ戦に先発される選手が多いだけでなく今シーズンはレギュラーとは言えない選手も含まれている。
そのためか、まずディフェンス面での連携ができずマーキングやプレッシングのタイミングや精度に難があった。というより、私にはまるで練習試合をしているように映った。
これは決して選手をバカにしているわけではなく、選手達の動きがぎこちなく、まるで久しぶりに試合をする選手たちがお互いの動きを確認しながら手さぐりで試合を行っているように感じたからだ。
DAZN(ダ・ゾーン)のスタッツ(統計)によると、確か前半の自陣ディフェンスゾーンでのプレイ率は仙台が28%だったのに対し、大宮は34%くらいだったと記憶している。
ディフェンスラインを押し上げられなかった証拠だ。
早く前線にボールを運ぼうとする動きもスピード感や精度を欠きツートップが早い攻撃を仕掛けることもほとんどできなかった。
もどかしさを感じていた矢先に、相手選手への反応が鈍い大宮の選手の動きの間隙をつかれ、瞬く間に2失点して勝負はついてしまった。
私は試合を見ながら、選手の先発起用法について考えていた。
ここからは私の推察に過ぎないが、おそらく石井監督が就任してから昨日の試合まで13日間という長い時間があったために先発選手の選択を誤らせた可能性があると考えている。
13日間を長いといったのは逆説的な表現だが、13日間という期間は石井監督に今まで先発を外されていた選手を含め、選手をまんべんなく見ることや、ある程度新しいことを試行できる時間を与えてしまったのではないかと思っている。もしかしたら選手の経歴や実績のデータあるいは実戦のデータなども見ることができたかもしれない。
もしリーグ戦の通常の1週間サイクルの中で途中指揮をとることになっていれば次の試合まで5~6日間しかない。選手をまんべんなく見たりする余裕はなく、新しい試みも限られたものになるだろう。あくまでも今シーズン大宮アルディージャがやってきたことの延長線上で、ここだけは活かしたい、ここだけは直したいという最小限度のことに傾注せざるを得なかったはずだ。
従って先発の選手を変える余裕などなかったのではないかと思うのだ。
もちろんこれらは推察だし、穿ったものの見方として謗りを受けるかもしれないが、降格をどうしても回避するために、良かれと思ってやったことが裏目に出てしまったような気がしてならない。
だから、私はこの試合を見た後で冷静になってみて、監督を責める気にも、選手を責める気にもなれなかった。
追い詰められた状況がこのような結果を招いたのだろうと思う。
ただ、これらの経験は決して無駄にならないとも考えている。
この試合で事実上の降格が決まってしまったが、このような経験もまた貴重なものだ。
その経験を活かして来季J2で一から出直すつもりでしっかりとクラブを強化してほしい。
そのためにも次節のホーム最終戦では一から出直すぞという姿勢をしっかりと試合で見せてほしいと思います。
大宮はその名の通り氷川の神様が鎮座する御宮があり、その神様に守られたクラブチームとスタジアムがあります。
NACK5スタジアム大宮の美しい芝とその匂い、その中で繰り広げられるフットボールは、私のような者を魅了してやみません。
J2で一から出直すと言いましたが、やっぱり悔しくて今さら涙が出てきます。
サポーターに愛され続ける大宮アルディージャになることを祈っています。