昨年末に連続ドラマ『忘却のサチコ』(2018年 テレビ東京 全12話)を見た。これは今年の1月2日に放送された『忘却のサチコ 新春スペシャル』(2020年 同)のプロモーションのための再放送と思われる。第4話から見て、すぐに面白い!と思った。こんな面白いドラマをやってたなんて知らんかった。世の面白いものをどれだけ見逃しているかと思うと毎度のことだけどゾッとする。くっそー、第1話~第3話を見逃しちまったぜ、と思っていたら、同じ時期にホームドラマチャンネルで再放送してたので、第1話~第3話もフォローできてラッキーだった。
即行で原作の漫画『忘却のサチコ』(2014年 小学館 全12巻)も数巻買ってきた。漫画はさらに面白い!
主人公はサチコさん。結婚式当日にフィアンセに逃げられ、そのショックで傷つきながらも、美味しいものを食べる時間だけ過去を忘れ、仕事に没頭することができる、という物語。サチコさんは20代後半で容姿端麗、スタイル抜群で仕事もできる。仕事は出版社の編集者。サチコさんはクソがつくほど真面目で、どちらかというと不器用で融通が利かないけど、心から仕事が好きなようだ。サチコさんは仕事柄、全国に取材にいきながらご当地グルメを堪能するので、旅グルメといってもいいかも。全編ユーモアにあふれていて、あなたは愛されてますよ!とサチコさんを応援したくなる。
女性の編集者が活躍する漫画で『重版出来』(2013年 小学館 最新刊13巻)があるけど、私にはもうひとつ思い出した漫画があった。それは漫画『山と食欲と私』(2016年 新潮社 最新刊11巻)だ。これも20代独身女性の趣味の登山とグルメを扱った物語。グルメといってもここでは登山で味わえるグルメだ。主人公の日々野鮎美は27歳の独身OL。趣味は登山で自称「単独登山女子」。登山という制約があっても、食材や調理に工夫を凝らせば、美味しい食事ができることをこの漫画は教えてくれる。鮎美さんは登山によって触れる大自然と、自分で作った料理を味わうことで、恍惚とした表情を浮かべるのだ。
さて『忘却のサチコ』『山と食欲と私』は20代のOLを描いた作品なのに、なぜ私のような中年男性が惹きつけられるのか?それはたぶんこんな理由だ。
この二つの作品には不思議な共通点がある。それは物語の主人公たちには自分達にしかないサンクチュアリ(聖域)があり、そこに我を忘れるほどの歓びを見出し、そしてそれをおもいきり表現する、というもの。
こんな「生きがい」のある人生はよくないですか?我を忘れるほどの恍惚感、それをこの若い二人の女性は軽々と見せてくれる。「生きがい」に年齢、性別は関係ない。「おひとりさま」ゆえに誰かに気を使ったり、自分を偽ったりすることがない世界。
「おひとりさま」で小恍惚(ピーク・エクスピアリアンス)を得る。「おひとりさま」は天国への入り口でもあるのだ。