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悟東あすか『神さま仏さまがこっそり教えてくれたこと』《すべてをゆだねた時に祈りは届く》

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先日あの世に聞いた、この世の仕組み』(雲黒斎 サンマーク文庫 2020年)の記事を書いていたら思い出した本があったので取り上げてみたい。

神さま仏さまがこっそり教えてくれたこと』(悟東あすか ダイヤモンド社 2018年)

作者の悟東あすかさんは高野山真言宗の尼僧で漫画家、結婚をして娘さんもいる、という面白い経歴の持ち主だ。悟東さんは真言宗に入門(得度)した時に、お大師さま(弘法大師)にこう祈る。

「私が見たいものは、こんなものではありません。私が見たいのは、真実の世界であり、そこに近づきたいのです。あなたの見た世界の片鱗でもいいので、そちらのほうが見たいのです」

傍から見ていると、真面目で切実なお祈りに思えるが、実はこれがまだ切実なお祈りでないことが後になってわかる。

高野山真言宗の僧侶が必ず受けなければならない修業に「百日の加行(ひゃくにちのけぎょう)」というものがあるそうだ。悟東さんは50日間を2回に分けて100日間の修行に参加する。修行は俗世とのつながりを完全に断った環境で行われ、想像を絶するほど厳しいものだそうだ。11人いた修行者で最初の50日間の修行を修了できた者は5人しかいなかったという。

劣等生だと自称する悟東さんは、作法やお経の習得に人一倍時間がかかり、どんどん追い込まれていく。精神的にも肉体的にも極限状態に追い込まれた悟東さんは、自分で息をしているのかさえ分からなくなるほど、自分の力では何もできなくなったそうだ。

もう神仏にゆだねるしかない。

自力では何もできない。この時はじめて悟東さんが切実にお祈りする瞬間が訪れる。悟東さんがお祈りしていると、そこにいられること自体が奇跡に感じられ、ありがたさに涙があふれ出たという。そして自分という小さな器を忘れ、自分を支えるあらゆるものとつながっていることを実感したそうだ。

それは弘法大師さまに祈りが届いた瞬間だったのかもしれない。

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