元日本代表で浦和レッズの鈴木啓太選手の引退試合をテレビで楽しませてもらった。浦和レッズの懐かしい選手も含めて、他のクラブチームからも現役の選手や引退した元日本代表選手が多数参加していた。元ドイツ代表で浦和レッズでも選手、監督として活躍したギド・ブッフバルトや岡田武史元日本代表監督も呼ばれていた。試合後に流れた鈴木啓太選手への関係者のコメントの映像は、愛情に満ちたものだった。
私はこの豪華な引退試合を見ていて感慨深いものがあった。それは浦和レッズが国内のリーグ戦、カップ戦、アジアのリーグ戦すべてにおいて優勝経験があり、かつ日本代表選手を多数輩出しているクラブチームだからだ。そうでなければこのようなセレモニーは、より身内だけのセレモニーとなっただろう。
鈴木啓太への労いと感謝の言葉をかけたのは元浦和レッズ社長の犬飼基昭氏だった。犬飼さんは、当時のことを振り返り、鈴木啓太がオリンピック日本代表キャプテンとして予選を突破した後、本選で代表から外れたことに憤り、「そんなことをするなら浦和レッズから代表選手は出さない」と思ったことや、オシム監督に同行した日本代表の欧州遠征で、「毎晩のようにオシム監督と飲んだ際、オシム監督の言葉の端々に鈴木啓太への信頼感があふれていた」というようなエピソードを披露して味のあるスピーチとなった。他にも鈴木啓太選手のプレイスタイルなどをユーモアを交えて語っていた。犬飼さんくらいじゃないかな、サッカーをよく知っていて、こんなスピーチができるのは。
私は浦和レッズが強くなったのには2つのきっかけがあったと思っている。それは埼玉スタジアム2002の建設と犬飼基昭氏の社長就任である。60,000人を収容できるスタジアムによって、浦和レッズは一気に増収した。確か浦和レッズの平均入場者数は35,000人くらいだったと記憶する。Jリーグでは断トツだった。それにより、引退試合にも出ていたがワシントンやポンテのような優秀な外国人選手を獲得することができるようになった。当時エメルソンもいた。ワシントンやエメルソンはJリーグ得点王になった。犬飼さんはこの増収の機会を見逃さず、積極的な選手補強を行い、オフト監督やギド・ブッフバルト監督とともに強いチームの礎を作っていった。そしてついにACL(アジアチャンピオンズリーグ)で浦和レッズが優勝するのだ。
ACLで優勝した年だったと思うが浦和レッズの年間収益は約80億円になったと記憶している。ちなみに現在は浦和レッズが約50億円、鹿島アントラーズが40億円、大宮アルディージャが約30億円といったところだったと思う。他のクラブチームは一部のクラブチームを除いて30億円~35億円というところだ。収益の視点でみると、浦和が1位、鹿島が2位、あとは一部を除きどんぐりの背比べ、というのが定着しつつある。
ただ、私の目から見ていて、浦和レッズは犬飼さんの遺産を食いつぶしているようにも見える。犬飼さんが退任したあと、優勝回数が収益と比例していないように見えるからだ。だからこそ、まだ浦和や鹿島にどのチームも追いつく可能性が残っていると思っている。
大宮アルディージャはこのままでは、増収は見込めない。スタジアムの収容人員が少ないからだ。大幅な増資があれば別だが、Jリーグにイギリスのプレミアリーグのような投資家による増資は期待できない。なぜなら、スタジアムは公共のものだからだ。運営が自由にならないものに投資家は投資しない。だとしたら順位を上げ、賞金やスポンサーフィーを得るしかないだろう。今年はDAZN(ダ・ゾーン)の参入で、上位4位までのクラブにはスポンサーフィーの大幅な分配があると聞く。スタジアムの観客収入による増収が見込めない以上、今シーズンは4位以内に入って収入を得る必要があった。優勝賞金や分配金を手に入れれば、それを原資にして優秀なプレイヤー、監督、コーチを確保することができる。また選手の中から日本代表を輩出することもできるだろう。チームは強くなり、ファンやサポーターが増える。選手層が厚くないと勝てないので増収が先かもしれないが、本来は浦和のようにACL優勝も狙わないといけない。
長期的にはやはりスタジアムの改修もしくは新設が必要になるだろう。収容人員のキャパが15,000人では限界がある。しかし税金を使ってスタジアムを建て替えるのには理由がいる。それが必要だと県民や市民から思われないといけないのだ。スタジアムの建て替えは最終的にはワールドカップの日本開催をまたなければならないのかもしれない。しかし、そうであったとしても、その機会はしっかりと準備の出来ているクラブチームに訪れるような気がしてならない。
サッカーファンとして鈴木啓太選手の引退試合を楽しませてもらった。その一方でいろいろ考えさせられた。犬飼さんが出ていたからかな?(笑)
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