この前のブログでミュージカル『ミス・サイゴン』について書いた。
ミュージカル『ミス・サイゴン』がオペラ『蝶々夫人』を下敷きに書かれていることに触れた。
今回はオペラ『蝶々夫人』について書いてみたい。
ミュージカル『ミス・サイゴン』はベトナム戦争を舞台に、アメリカ兵クリスとベトナムの少女キムとの悲恋物だった。
オペラ『蝶々夫人』は長崎を舞台に、アメリカ海軍士官ピンカートンと士族の令嬢蝶々さんとの悲恋を描いた物語だ。
ここで絶対にオススメしたいCDがある。
カラヤンがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した『蝶々夫人』だ。
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」全曲
蝶々夫人をミレッラ・フレーニ、アメリカ海軍士官ピンカートンをルチアーノ・パヴァロッティが演じている。
まず触れたいのは、演奏の美しさ。
カラヤンのオペラはとにかく演奏がきらびやかで、一言で言うと「超かっこいい!」。
イタリアのオペラは情熱的で、いい意味で”土臭い”ものが多い。
カラヤンはオーストリアの生まれだし、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団もオーストリアの楽団だ。
イタリアの土臭いオペラをカラヤンとウィーンのテイストで変換すると、なんともきらびやでかっこいいものが出来あがる、とでも言ったらいいのかな。
カラヤンの『蝶々夫人』の中でオススメの曲はふたつ。
ひとつは蝶々さんが登場するシーンで歌われる「そら、やって来ましたよ、丘の上まで」。
ピンカートンとの結婚に憧れ、喜びに満ち溢れた蝶々さんのソロ。
演奏とコーラスが美しすぎる。
なによりもソプラノ歌手ミレッラ・フレーニの歌唱がすごい。
蝶々さんをこんな風に表現できるひとを私は知らない。
高音のパートをとてつもなく繊細に歌い上げる。
その繊細さを、おそらくカラヤンが引き出している。
意識がとびそうになるくらい美しいですよ。
ふたつめは第一幕のラストで歌われる「愛の二重唱」。
蝶々さんとピンカートンのデュエットだ。
劇中で最高の盛り上がりをみせるところ。
『ミス・サイゴン』でいうとデュエット曲「サン・アンド・ムーン」かな。
曲の後半部は「そら、やって来ましたよ、丘の上まで」と同じメロディーラインが使われる。
だけど今度はデュエットだから、蝶々さんはピンカートンへの愛情を思いっ切りぶつける。テノール歌手のパヴァロッティもそれを思いっ切り受け止めて歌う。
繊細でのびやかな歌唱と演奏をカラヤンとフレーニとパヴァロッティが作りあげている。
オペラ『蝶々夫人』にはこのほかにも「ある晴れた日」などの名曲もある。
『ミス・サイゴン』ではレア・サロンガに魅了されたが、『蝶々夫人』ではミレッラ・フレーニに魅了される。
その才能を引き出したカラヤンのオペラ『蝶々夫人』も是非聞いてみてほしい。
私が持っているCDはポリドール版だが、現在はユニバーサルミュージックの傘下に入っているようだ。