代表取締役社長 森 正志氏
取締役事業本部長 久保田 剛氏
取締役管理本部長 小笠原 清孝氏
強化本部長 西脇 徹也氏
育成普及本部長 岡本 武行氏
これは1月20日のサポーターズミーティングの登壇者ですが、お気づきでしょうか?
大宮アルディージャには強化部門(育成普及本部含む)に取締役(役員)がいません。
おそらくこれが組織の致命的欠陥のひとつです。
普通の会社に例えてみましょう。
事業本部は観客収益を管理している部門だから普通の会社でいったら営業部(もしくは事業部)というところでしょう。管理本部はわかりやすいですね。どこの会社でも管理部はあって総務や人事をつかさどる部門です。最近はコンプライアンス(法令遵守)やリスクマネジメントの役割も大きいのではないでしょうか。
さて強化部門を普通の会社に例えると何になるでしょう?
選手は主力商品(喩えです)だから商品開発部、あるいは商品企画部的な要素がある部門といえそうです。電機メーカーなら主力の電機製品になるだろうし自動車メーカーなら自動車ということになる。
普通の会社に喩えると大宮アルディージャは営業部と管理部に取締役(役員=経営の役割を担う責任ある人)はいても主力の商品を扱う商品開発部に取締役(役員)がいない組織だといえそうです。
これは途方もない話しで、電機メーカーや自動車メーカーで主力商品を取り扱う部門に責任ある経営者(役員)がいないということになります。大手の会社ならまずこんなことはあり得ない。主力商品を扱う部門にはそれ相応の専門知識のある役員を置き、部門のバックアップ体制を整えるものです。
通信会社として大手であるNTTがこのような常識を知らないはずがない。にもかかわらずこのような組織上の欠陥を放置しているのにはいくつかの理由が考えられます。
例えば、人材がいないー、人材はいてもクラブにアサイン(配置)できない事情があるー、サッカークラブの事業を軽視しているー、クラブ内の人材を育成して役員に取り立てる気がない(NTT関連企業以外からの役員を配置する気がない)ーなど、他にも理由はあるかもしれませんが何らかの事情があることは察しがつきます。
サポーターズミーティングで配布されたサポーターとクラブ間の質疑応答の資料にこんなやりとりがあるので紹介します。(公開資料です)
質問(サポーター)「なぜ大宮アルディージャの社長はNTTの社員(おそらく役員の間違いか※筆者注)がなるのですか?スポーツ経営のプロフェッショナルな方が社長をやるということはないのですか?」
回答(クラブ)「経営全般に関する資質と経験および人柄などから適任者を選任しております」
これは面白い質問です。(笑)
仮にサポーターである私がこの質問に回答すると
「今までの大宮アルディージャ(エヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティ株式会社)の代表取締役人事を見ているとNTTの役員がやるようです。株式会社において親会社から子会社へ役員を配置することは一般的に行われており不自然なことではありません。クラブ回答にもある通り社長は経営全般に関する資質や経験を備えているはずですから必ずしもスポーツ経営のプロフェッショナルである必要はありません。ただし、その場合はスポーツ分野の専門的な部分を補佐するバックアップ体制を構築する必要があると思います」
となります。(笑)
私も株式会社の仕組みは分かっているつもりです。親会社と子会社の関係もわかります。(笑) 経営者によっては向き不向きもあると思うので必ずしもスポーツ経営、言い換えるとプロサッカークラブ経営に向いている経営者が配置されるとは限りません。これはスポーツ経営に限らずどの企業体においても起こりうることです。
ただし一般の企業はどのようにリスクヘッジしているかというと、先ほども少し触れましたが、役員の中に専門家を配置したり、社外取締役(役員)に専門家を配置したりして弱点を補おうとします。代表取締役が畑違いでも、あるいは最悪経営の資質に欠けるようでも、それをバックアップする体制を整えるのです。
そうして事業の経営を持続的にしていく努力をするのです。
しかし残念ながら大宮アルディージャ(エヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティ株式会社)にはそのような工夫や努力をしている様子が感じられません。
サポーターズミーティングではサポーターから代表取締役社長への厳しい質問もありました。2017年の振り返りを求められた質疑応答で森社長がつい口にしてしまった言葉が「目利きができない」でした。おそらく、サッカーについて「目利きができない」という文脈だったと思います。
私はこの言葉の上げ足を取るつもりで書いているのではありません。その言葉が本当であっても社長は口にしてはいけないのですが、正直なところでしょう(笑)
しかしそれ自体はそれほど問題ではありません。問題はサッカーに関して「目利きのできない」代表取締役を補佐する役員がいないことです。
おそらくサッカーに関して「目利きができた」のは前任の強化本部長でしょう。森社長は強化本部長があげてきた監督人事や選手人事の承認をしただけだろうと思います。もちろん取締役会等で話し合うこともあったかと思いますが、役員の中にサッカーの「目利き」がいなかったであろうことには想像がつきます。
森社長が2017シーズン振り返りを満足にできなかったのも無理はありません。前任の強化本部長の取った監督や選手の入れ替えは結果的にはうまくいかず大宮アルディージャは降格しましたが、もはやそれはただの結果です。
問題は強化本部長の施策を冷静に分析して可否判定をしたり、あるいはバックアップしてあげられる体制があったかどうかです。トップチームには浮き沈みがつきものです。選手は移籍で入れ替えが起こりますし、それに伴って同じ監督でも成績を維持できないことも起こりえます。これは他クラブでも同じでしょう。
しかしそれをリスクヘッジしていくのが組織ではありませんか。
もしそういう体制が整っていなければ強化本部長、監督、コーチ、選手をいくらかえても多分同じです。チームが沈んだ時に浮上させることができずにJ2に降格するか、J1でも降格圏をうろうろすることになるでしょう。
もしかしたら大宮アルディージャ発足後20年間はその繰り返しだったのではないでしょうか。
逆説的ですが大宮アルディージャの弱さの秘訣を垣間見たような気がします。
そしておそらく、他クラブも同じような弱点や欠点を抱えているように感じます。大宮アルディージャの収益規模はJ1リーグの中で決して低い方ではありません。大宮アルディージャと収益規模が似たようなクラブがいくつかありますが、そういったクラブの中にもJ2に降格したり、J1でも下位に低迷するクラブを見かけます。
それぞれのクラブで事情は異なるでしょうが、一部のクラブを除き、同じようなジレンマを抱えているように感じます。
私が危惧するのは、何をやっても慢性的に強くならない状況に、実は経営者のモチベーションが一番下がっているのではないかということです。経営者のモチベーションが下がると現場のモチベーションは上がらないのが普通です。一見モチベーションが高く見えても空元気だったり、入社(加入)した最初だけだったり、社員(選手、スタッフ)によってモチベーションのばらつきが起こるものです。経営者が誰であっても何をしてもモチベーションが高く淡々と自分の仕事をこなす社員は極一部に限られます。スローガンの「ONE」は絵空事になりかねません。
「どうせ役員なんか何年かたてば任期満了でいなくなるんだから適当にやろう」となるか「この会社には魅力を感じない、転職(移籍)しよう」となるのが関の山です。(笑)
私が気の毒に感じるのはオーナー社長でもない限り社長もサラリーマンです。株主の意向には逆らえないことのほうが多いでしょう。個人的には森社長は退任すると思っていましたがそうはなりませんでした。(それを望んでいたわけではありません) これは主観ですが、森社長の任期がいつまでなのか知りませんが、もし森社長が親会社に辞意を伝えているのに任期を全うさせようとしているなら親会社がお茶を濁しているようにしか思えません。
私は初めてサポーターズミーティングに参加したのですが、去年のプレゼン資料を使いまわしている部分が多いですね。ドラスティックに変わらなければならない年に去年とあまりかわらない資料を使って代表取締役がプレゼンしている姿をみればモチベーションなど無いことが分かります。
ビジョンとかスローガンとか書いてありますが絵空事に過ぎないでしょう。
もうすぐホームページで資料の公開があると思うので見比べてみてください。
私がいまひとつ分からないのは、このようにクラブが慢性的に弱くなって経営者のモチベーションも高く感じられなくなっていることについて親会社がどう思っているかです。
大宮アルディージャの組織上の弱点に気づいていないはずはないと思うのですが、強化部門に据える役員の人材がいないのでしょうか。ヘッドハンティングは試みたのでしょうか。代表取締役にしても社外からという発想はないのでしょうか。新体制で強化本部長になった西脇さんは生え抜きの本部長だそうですが取締役にすることはできないのですか。社員から取締役が生まれたら社員のモチベーションは上がりますよ。それが時期尚早というのなら佐々木則夫さんを取締役にできないのですか。佐々木則夫さんはクラブ経営の経験はないかもしれませんがチーム強化のスペシャリストですよ。西脇さんも心強いのではないでしょうか。トータルアドバイザーみたいな中途半端なことをやらせないで経営に係わってもらったらどうでしょうか。たいへん失礼な言い方ですが西脇さんが育ったら佐々木さんに退いてもらって西脇さんを晴れて役員にされてはいかがでしょうか。もちろん西脇さんも部下を育てなければなりません。タイミングにもよると思いますが佐々木さんに監督のオファーを出すこともあるかもしれませんね。
私は株主じゃないので役員人事などに口を差しはさむこと自体、滑稽なのはわかっているのですが(笑)、株主が大手なだけに「なんで?」という思いが拭えません。元気が出るような施策をクラブから提示されませんでしたし、せめて愛情や熱のこもった言葉だけでも経営者に期待しましたが、それも無かったというのが正直な感想です。子会社の役員人事や施策は株主が承認しているのですよね。
他にいないので仕方がないのかもしれませんが、西脇さんに強化部門の2017総括をさせるってひどくありませんか。(笑) 突然強化本部長になって、しかも役員でもないのに。(西脇さんのプレゼンは熱かったですよ) 石井監督でうまくいかなかったら今度は西脇さんが孤立するのではないですか。
大宮アルディージャの20年の歴史や文化を語れる経営者もいなければ、サポーターや選手の心を揺り動かすような熱い言葉を持っている経営者が出てこない訳がなんとなく分かる気がします。
経営にスタイルがないのだと思いますよ。だからクラブにも特徴のあるスタイルのようなものが根付かず文化が花開かないのではないですか。
石井さんに監督してもらって勝利のメンタリティとかいって鹿島の文化を植えてもらいますか?
やめたほうがいいと思いますよ。
それよりも確固とした経営スタイルを確立するほうが大事だと思います。
こんな事をいうと身も蓋もないですが、このクラブは各論をいくら戦わせても不毛な状態にあるのではないですか。各論も大事なのでこれからも言いますけど。(笑)
2017シーズンのドタバタ劇から2018シーズンの新体制を見て、このクラブの本質に気づかされたように思います。
だからといって私は悲観するつもりは毛頭ありません。変わっていく可能性を山ほど残していると思いますし他クラブとのどんぐりの背比べからも抜け出せるチャンスだと思っています。
そうするとどこかのモノマネ芸人のギャグではないですけど
「まだまだ伸びしろがありますねー」ということにはなりますね。(笑)
最後にこのサポーターズミーティングでひとつだけ明るいトピックスがありました。
それは新スタジアム建設の可能性が出てきたことです。伸びしろのひとつですよね。(笑)
新スタジアム建設は私の夢でもあります。
それについてはまた別の機会に書いてみたいと思います。