昨年の秋冬にやっていたドラマで面白くて脚本でも読んでみたいと思ったオリジナル作品を2本。
尾崎将也脚本『まだ結婚できない男』(フジテレビ 2019年)と金子茂樹脚本『俺の話しは長い』(日本テレビ 2019年)
前作ドラマ『結婚できない男』(同 2006年)を見ていなかったので、わかるかな?と思ったけど、大丈夫だった。前作を見ていなくても楽しめる。主人公は仕事はできるし、高級なタワーマンションに住んでいて、趣味の料理やクラシック音楽を満喫する悠々自適な独身生活を送っている。妙に理屈っぽくて女性とうまくつきあえないけど憎めない中年男性の話し。
『まだ結婚できない男』の面白みは、物語の始まりから終りまで主人公の心が満たされているところ。この人は結婚できるのか?と心配しているのは母親や周辺の人だけで、本人はあまり気に留めていないのが滑稽だ。自分の外側の価値観では幸せは感じられないことを主人公が見せてくれている気がする。小理屈をこねたり、説教したりするセリフも面白く、脚本でも読んでみたい作品だ。
もうひとつのドラマは『俺の話しは長い』。これはニートの独身男性の話し。主人公はニートで、周辺の人たちは就職の心配をする。主人公はなんだかんだと屁理屈をこねて仕事に就かない。主人公にはそれなりの夢があったようだが、それはどうも本人にとって違ったようだ。さて何をするか。それがわからない。大の男がそんなことでどうする、と説教する人もいれば、おおらかに見守る人もいる。
これも要は自分の外の価値観には幸せを見出せない人間の物語のような気がする。『まだ結婚できない男』と同様、主人公のこねる屁理屈がなんともコミカルで、どりらのドラマとも本当に楽しませてもらった。
『俺の話しは長い』を見ていて、シチュエーションは全く違うけど、なぜかドラマ『ちょっとマイウェイ』(日本テレビ 1979年)を思い出した。洋食レストランを経営する三姉妹のお話し。活発で男勝りの三女役をやった桃井かおりと、おっとりした長女役の八千草薫とのちぐはぐでコミカルな会話が面白い。事件らしい事件もおこらないし、主人公がモチベーターというわけではないけど、日常の何気ない会話が面白いところが『俺の話しは長い』と似ているからかもしれない。
『俺の話しは長い』では主人公を見守る母親役の原田美枝子さんが個人的に良かった。何もかも許してくれるお母さん、っていう感じ。八千草薫さんとイメージが重なったのかもしれない。八千草薫さんは昨年亡くなってしまった。残念だ。