2017年5月20日(土)16:00 NACK5スタジアム大宮
大宮アルディージャ対セレッソ大阪
試合結果 大宮0-3C大阪(得点者:C大阪 63'清武弘嗣 76'山村和也 86'杉本健勇)
コーナーキックでのセットプレイの際、大宮はゾーンディフェンスに戦術を変更した。ゴールエリアにディフェンダーを密集させマンマークではなくゾーンで守る戦術だ。結果はそのゾーンディフェンスが失敗しセットプレイで2失点を喫した。確かにC大阪には背の高いFWやDFがいるので、それに対応するための戦術変更だったのかと思われるが、少なくとも今季ホームゲームでコーナーキックによるセットプレイでゾーンディフェンスを採用することは極めて少なかった気がする。意見は分かれると思うが前々から私はセットプレイをゾーンで守ることの価値に疑問を持っている。ゾーンディフェンスの利点が良く分からないというのが本音だが、セットプレイでのゾーンディフェンスは選手を”ボールウォッチャー”にする。これは必然で、マンマーク(ひとを抑える)していないので、ボールを見ざるを得ない。仮にコーナーキックをゾーンで守る場合、ニアサイドに蹴り込まれ、ボールを後ろにそらされると、ほとんどの選手が”ボールウォッチャー”になっているため、相手選手にそこに走り込まれると対応ができない。GKは原則的にボールを見る係りで、ゴールマウスから飛び出したら必ずボールに触ってクリアないしはキャッチしなければならないが、ゾーンで味方選手が密集している状況で飛び出すスペースがないことが多い。従って、私はセットプレイをゾーンで守る利点があまりわからない。唯一考えつく利点は、相手チームとの身長に歴然と差があり、マンマークをつけても必ず競り負けてしまう要素がある時に限られると思っている。私の考え方が古いのかもしれないが、”多責任は無責任”になりかねないと思っている。DFは人を見て(マンマーク)、GKはボールを見る、そしてGKはゴールマウスから出たら必ずボールに触る、というシンプルな決まり事が私にはわかりやすいし、失点しても納得感がある。それとゾーンでセットプレイを守るなら、高い技術が要求されるのではないだろうか。簡単な戦術ではないと思う。
C大阪戦は同じ戦術で2度失敗したわけだが、選手の落ち込み様や失望感が大きいように感じた。気になったのだが、今回のゾーンディフェンスは選手とコーチが対C大阪戦に向けて入念に話し合って双方合意のもと決めた戦術だったのだろうか。もし選手が自発的にゾーンの戦術採用をし、かつ入念に練習を繰り返したのならば、失点しても納得感があるはずだ。また、コーチから高いレベルが求められるゾーンディフェンスの戦術にかんするレクチャーは行われたのだろうか。2失点ともニアサイドでボールを擦らされたり、ファーサイドでボールを折り返されたわけでもないのにGK、DFともに相手選手に働きかけることさえできずに簡単にやられてしまった。もし選手の能動的な戦術採用とコーチの戦術トレーニングがないのならば、精神面、技術面ともに充実しておらず、あのような失望感をピッチ上で見せることになったのではないかと気がかりだ。
前半はFW柿谷曜一朗はサイドハーフのようなことをやらされていたし、MF清武弘嗣もパサーに徹して自らが仕掛ける動きがなかったので、やられる危険度が低く、私は内心ほっとしていた。つけ入る隙は前半だった。しかし、大宮は左MFに大前元紀を先発させたが全くと言っていいほど機能しなかった。運動量が少なく、パスアンドランがないのでマークを引き付けることもマークをずらすこともできない。裏を狙う動きもないうえに、ディフェンスのフォローが遅いために、C大阪に左サイドで起点を作らせてしまう。前節仙台戦ではFWムルジャを前半であきらめた思い切りはなく、MF清水慎太郎がベンチに入っていなかったからかもしれないが、後半も68分まで大前を使い続けた。4-4-2でサイドハーフに運動量がないのは致命的だ。後半はFWのポジションに長谷川アーリアジャスールを起用してFW江坂任をシャドウに、FW瀬川祐輔をMFにする形をとったようだったが、仕掛けようとするのは瀬川だけで単発の攻撃に終わった。江坂は中盤でディフェンスに貢献していたが、江坂にディフェンスを強いるなら、サイドハーフにはそれを上回る運動量を求めてほしい。江坂がディフェンスするのなら他の選手が得点するしかないのだから。そうでないのなら、この期に及んで4-4-2(ないしは4‐5‐1)にこだわる必要がどこにあるのだろうか。また失点が多く、ディフェンスが安定しないなら、3-5-2(3‐6‐1でもいいが)は真剣に模索しているのだろうか。
後半の3失点目はFW柿谷とMF清武のお遊戯のようだった。サイドから真ん中目にポジションを取り始めた柿谷とMFからFWのシャドウ、トップ下にポジションをとった清武は次第に前を向き始めた。柿谷の動きはなめらかで、7~8割程度の力しか使っていない。清武のパスの精度は上がり、ふたりの技術の高さを見せつけられて試合は終わった。