8月の納涼歌舞伎は野田秀樹の『贋作 桜の森の満開の下』をやるようだ。
少し前の話しだが、今年の1月に野田秀樹の芝居を見に行った。その時に感じたことなどメモにしていたことを投稿したいと思います。
追憶 中村勘三郎
2017年1月24日(火)池袋の東京芸術劇場にて野田秀樹作・演出の「足跡姫〜時代錯誤冬幽霊〜ときあやまってふゆのゆうれい」を観劇した。生前の勘三郎と親交の篤かった野田秀樹が公然と勘三郎へのオマージュとしての作品と言い放った。それほど野田秀樹にとって勘三郎は影響があった役者だったのだろう。
私の勘三郎(私には勘九郎のほうが馴染み深い)の思い出は、なんといってもまだ市川猿之助(現市川猿翁 香川照之さんのお父さん)が現役だった時に二人が共演する芝居をよく見に行ったことだ。
歌舞伎座で猿之助か勘三郎の芝居がかかると、私は松竹でチケットを予約して見に行った。お金がある時は三等A、お金がない時は三等Bだった。二人とも人気役者だったので、松竹も昼公演につけ夜公演につけ、二人が重なるようにしていたように思う。
野田秀樹の『足跡姫』の中でも主人公の出雲阿国に「芝居をやるつもり、東銀座あたりで」などと笑いを誘うセリフを言わせていたが、いつもわくわくしながら東銀座に行ったのを覚えている。野田秀樹が初めて歌舞伎を演出した『野田版 研辰の討たれ』や第二弾の『野田版 鼠小僧』も歌舞伎座に見に行った。芝居の終わりに歌舞伎座がスタンディングオベーションになったのを初めてみた。
『足跡姫〜時代錯誤冬幽霊〜ときあやまってふゆのゆうれい』
野田秀樹 作・演出
池袋 東京芸術劇場
2017年1月24日(火)ソワレ
久々の芝居見物になった。
何より新鮮だったのは宮沢りえの演技力だった。癖がなく、なおかつ存在感を示す演技に魅了されてしまった。鈴木杏や池谷のぶえといった女優も存在感を示した。芝居が始まってからしばらく鈴木杏に気づかず、芝居の途中で、テレビドラマに出ていた、あの可愛らしい「鈴木杏」であることに気づいた。
トレンディドラマ(古い表現かな?)に出ていた、あの「妻夫木聡」も野田秀樹の舞台にでるようになってから、すっかり舞台役者が板についているようだった。野田秀樹は役者さんの能力を自然に引き出す力がある人だ。
中村勘三郎(私には勘九郎が馴染み深い)へ宛てたこの芝居はラストシーンで感動を迎えることになる。
中村勘三郎の舞台へ「行きたい」思いが「生きたい」という思いと重なり、その思いを野田秀樹が舞台で表現し、受け継いでいく、ということではなかったろうか。
『野田版 研辰の討たれ』で勘三郎(当時勘九郎)が演じた辰次が死ぬシーンで流れていた「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲が『足跡姫』の中でも全編に散りばめられ、ラストシーンでは満開の桜の中、「カヴァレリア・ルスティカーナ」が流れ出した時には、芝居や勘三郎を愛する観客のすすり泣きにつられて、涙が溢れてきた。
それにしても芝居は本当にいい。時間や空間を飛び越えて別の世界に連れて行ってくれる。
空間という意味では東京芸術劇場もたいへん見やすかった。舞台は歌舞伎を模した花道が設けられ、間近で役者を見ることができたし、7〜8年前に来た時に比べてロビーやトイレの内装が綺麗になっているように感じた。しばらく芝居を見ていなかったが、花道の幕がチャリーンと開く音を聞いていたら、また「行きたく」なった。
『表に出ろいっ!』はダブルキャストで黒木華も出演している。そしてこの秋にはEnglish versionも上演決定!(詳細はNODA MAPのHPでチェック!)
勘三郎さんの息子の勘九郎さんの『三人吉三(さんにんきちさ)』がDVDになっているみたい。お父さんの『三人吉三』は最高に面白かったな。