食欲の秋、読書の秋が来た。髙田郁著の『みをつくし料理帖 想い雲』の巻を読んでいたら「こんがり焼き柿」という料理が出てきた。
柿を焼いて食べると甘くておいしいそうだ。
『みをつくし料理帖 想い雲』(ハルキ文庫)の末巻には物語に出てくる料理のレシピが付録されていて親切だ。料理好きなひとなら物語に出てきた料理を実際に作って食べることもできる。
江戸料理の出典も掲載されていて「こんがり焼き柿」という料理は『完本 大江戸料理帖』(新潮社)という本を参考にしているとのことだ。その他の料理の出典も掲載されているので江戸料理に興味があるひとにはたまらない本なのではないだろうか。
私は特にグルメというわけではないし、料理自体もするわけではないので、物語に出てくる料理を読んで「うまそうだなあ」と思う程度だ。(笑)
昔一度だけ池波正太郎の『鬼平犯科帳』に出てくる「鮎飯(あゆめし)」を母親に作ってもらって食べたことがあるけど、本当においしかった。
池波正太郎の小説にも、寒い夜にわかめでしっかりと出汁をとった湯豆腐を食べながら熱燗で一杯、などというシーンが出てくる。酒が飲めない私でもよだれが出てくる。(笑)
池波正太郎はかつて一度だけ江戸時代になかった料理を書いてしまい後悔したことがあると、何かで読んだことがある。江戸料理については私も素人だから詳しくはわからないけど、先ほどの江戸料理の出典のように、江戸料理の研究も進んでいて、そういったことも少なくなっているのではないだろうか。
『みをつくし料理帖』に出てくる「つる家」という料理屋の名物料理に「とろとろ茶碗蒸し」というのがある。
銀杏(ぎんなん)に百合根(ゆりね)、海老(えび)に柚子(ゆず)で作ったとろとろ茶碗蒸しと、大根の葉と雑魚(じゃこ)を胡麻油でさっと炒めたものが白飯に添えて出てくる。
よだれが出てきますねえ。(笑)
秋は食欲と読書の季節。高田郁の『みをつくし料理帖』はその両方を満たせる恰好の本だ。