『ゲゲゲの鬼太郎』を書いたマンガ家の水木しげるさんが面白いことを言っていたのを聞いたことがある。
水木しげるさんは日本にとどまらず世界中の妖怪などを調べていたことで有名だ。自宅の書庫には世界中の妖怪の資料があるという。博物学者の荒俣宏さんとも交友があったことで知られている。
その水木しげるさんが言うには、世界中の天国観や地獄観を見ると面白いことがわかるという。
それは地獄観は国によって様々なものがあるという。例えば日本のように閻魔さまに舌を抜かれたり針の山を歩かされるといったものもあれば、西洋に見られる悪魔が出てくるようなものもあり、様々あるというのだ。
一方で天国については、だいだいどこの国でも似たような世界観が示されるという。
天国についてはおおよそこんな感じだ。
きれいな川のせせらぎがあって、羽衣をまとった天女のような美しい女性がいて、おいしい果物や食べ物が豊富にあって、何一つ困らない、そんな世界だ。
そして水木しげるさんはこんなことを言うのだ。
みんな生きるのがたいへんだとか、ここは生き地獄だというけれど、少なくても日本は天国だよ。水はおいしいし、スーパーにいけばおいしくて新鮮な食べ物が豊富にあって何一つ困らない、夏になれば薄着できれいな女の人がたくさん歩いているじゃないか。
これを聞いた時、私は大笑いしたのを覚えている。(笑)
私は水木しげるさんの明るい世界観が大好きだ。
水木しげるさんは大東亜戦争の時、ラバウルで左手を失くしている。まさに地獄を経験しているわけだが、戦争経験者が持っている悲愴感のようなものがない。左手を失くしてラバウルをさまよっていた時も生きる希望を失わなかったという。
そんな水木しげるさんのことを『ゲゲゲの女房』で有名になった奥さんの武良布枝さんも生きる活力(生命力のようなもの)がある人だったと語っていたと思う。
私は水木しげるさんによって世界の天国観は似たようなものということを知った時、もしかしたら地獄はないのではないかという結論に達した。
なぜなら精神世界を扱ったような本を読んでいると、天界(ひとつに統一された霊界のようなもの)が登場しない本はないが、地獄については登場しない本もあるからだ。
地獄の世界観が様々あるということからも、地獄は人を天国に導くための方便なのではないかと私は思うようになった。
天国はひとつだから普段そのことにひとは気づかない。地獄という対極の世界をみせることによってその存在に気づかせてくれるものなのかもしれません。
この方便は人を幸せに導くこともできれば、地獄だ地獄だと人を煽って騙すこともできそうです。(笑)
いずれにしても一足飛びに天国に導いてくれた水木しげるさんの世界観に感謝したいと思います。
合掌